今年、金融庁から下記のような要請がありました。
要するに”株主総会開催前にとっとと有報を開示せよ”というお達しです。

言うまでもなく現場はこの時期はただでさえ炎上してるのに油を注いだ感じなっていると思います。
金融庁のサイトで書いている通り、開示は総会の”3週間前にすることが望ましい”とされているみたいです。”3週間前”の根拠はよくわかりません。
何でも国際的にその傾向が強まっているから、とのことです。色々と突っ込みたいところはありますが、ここでは抑えて関西私鉄の対応状況について調べてみました。
ほぼ全社で1日前開示を実施

想定通りではありますが、結論から言うとJR西日本を除き、関西私鉄については全社とも株主総会の前日に提出(掲載)となりました。
株主総会自体はそこまで去年より後ろ倒しにはなっていませんので、実質的には開示が数日程度早まったぐらいでしょうか。
JR西日本のみ、総会の2日前提出となっております。えらい。
やっぱり多くの会社が数日前開示であることを思うと早期開示、特に1週間を超えるとなるとかなり負担は大きいと思います。
早期開示になることによる記載内容の変化
なお、今回の早期開示が要請されたことによってある懸念が多くの会社で生まれます。
それは株主総会で決定される事項の取り扱いについて。

配当や役員の報酬、選解任については株主総会の決議事項(総会で決定する事)になっています。
要するに、今回の早期開示によって、上記の決定事項が未決定の状態で有報を提出する必要が生じます。
この点については金融庁より指針が出されていて、有価証券報告書の該当部分に注記(記載通りの予定だが最終的には総会で決定される旨)することで解決するみたいです。
なお可決予定で記載したのにどんでん返しで否決された場合訂正が必要になりますが、
この場合はその旨、内容の臨時報告書の提出でOK!だそうです。
阪急阪神ホールディングスの有報確認したところ、しっかりと注記がなされていました。

3週間前開示の企業ってあるの?
関西私鉄は皆1日前開示でしたが、じゃあ金融庁の求める3週間前開示はあるのか?という疑問ですが、あるみたいです。
その企業は鉄道会社ではありませんがこちら

ぱっと見、聞いたことのない会社ですが、T&Dホールディングスは太陽生命、大同生命など有名な保険会社を束ねる持株会社です。
上記2社は要請が出る以前より早期開示を行っている企業で、
T&Dホールディングスによると、早期開示を行っている理由は、
・経理部門、若手社員を中心としてモチベーションアップにつなげたい。
・早期開示で投資家との円滑なコミュニケーションを実現したい。
というのが理由なんだそう。
経理部門ってどうしても成果物が見えずらい(社内のインフラ的存在なので)かつ”いかにコストを抑えられるか”が焦点になりがち、その上多忙な場合が多い部門でもあります。
早期開示という”他社ができないことをやってのける”という成果は良い刺激を与えているのかもしれません。
一方でこのような対応がどの企業でもできるかというと恐らく厳しいと思われます。
やはり経理人材の不足も大手企業で叫ばれるようになってきましたし、何より企業が問側の課題を解消したところで監査法人がパンクする可能性の方が高い気がしますね。
“株主に有用な情報を早期に提供する”ことが主眼なのであれば、早期開示に拘らず法規制の変更も含めて議論すると良いのではないでしょうか。
参考文献および出典
・金融庁
株主総会前の適切な情報提供について 2025年6月23日 最終閲覧
URL:https://www.fsa.go.jp/news/r6/sonota/20250328-2/20250328-2.html
有価証券報告書の定時株主総会前の開示について 2025年6月23日 最終閲覧
URL:https://www.fsa.go.jp/policy/kaiji/sokaimaekaiji.html